私にはまだパフェを食べる資格がないのか
あれから一年以上経ったが私はまだパフェを食べていない。
ブログを作ったことなどほとんど忘れて過ごしていて、ほんの五分ほど前にふとパフェを食べたくなり、去年書いたもののことを思い出して読んでみた。
パフェを本当は食べてみたいと思っているのに、ごちゃごちゃと御託を並べて自分にはパフェを食べる資格は無いなどと宣う私は哀れだし、サンマルクでパフェを注文しただけの女の子を無意味に見下して馬鹿にしている(のに馬鹿にしていないフリをしている)ところなど本当に愚かだと思う。
パフェはかわいい女の子しか食べてはいけない食べ物ではない。パフェを食べるのに資格はいらない。パフェが似合うかわいい女の子じゃなくても、胸を張ってパフェを食べていい。私はパフェを食べてもいい。と、思う。
それなのに私はまだパフェを食べていない。
パフェは。
パフェはとても魅力的な食べ物だ、と思う。冷たいし、甘いし、見た目も綺麗。あの独特な形をしたグラスもかわいい。透けて見えるフルーツと生クリームの重なりがいい。タカノフルーツパーラーの桃のパフェは美しかった。何度もメニュー写真を見た。絶対に、絶対に美味しい。美味しくないわけがない。パフェ、パフェ食べたい。食べてみたい。あぁ。
いつか堂々と胸を張って、もしくは当たり前に、パフェを食べられる人間になろうと思う
夜寝られない
よる。窓の外が明るいのはマンションの内廊下に明かりがついているから。私が夜眠れないのは窓があかるいからかもしれない。
いまこのままパジャマで外に出ることができたら、裸足で廊下を歩いて、裸足で冷たいエントランスに出て、そのまま裸足でアスファルトの坂を下りていければ。
裸足で夜歩く坂は下り坂がいい。暗い。街灯がへんに明るいオレンジで、きっと外に出たことを後悔する。遠くで車の走る音。
このまま下まで降りていこうか、大通りはきっとトラックだけが走っている。でもわたしは途中の道を右に入っていきたい。いつだったかホームレスのおじさんが捨てられた布団を引きずってこの道を入っていくのを見た。あれは夢だったかもしれない。
道の先は暗くて怖い。変質者が20人も潜んでいそうな道だ。森に入る前のあのプレハブの建物が、猟奇殺人事件を起こすための建物のように見えたこともあった。そんな建物はそもそもなかったのかもしれない。あの暗いところにはきっと虫もいるし、じめじめしている。いきたくない場所だからこそ今はそこに歩いていきたい。あちらへ歩いていけば、永遠に夜のまま歩き続けていられるような気がする。
本当はわたしは布団の中にいてあたたかい。ずっと夜のまま、あたたかいところで丸くなっていたい。冷たいところを歩きたい。足があたたかくなってきたのでそろそろ寝られるのかもしれない。
パフェを食べる資格について
自分にはパフェを食べる資格が無いと思う。これはとても悲しい話だ。
パフェの甘さ冷たさ、生クリーム、透明で何か余計な装飾の施された器、フルーツ、チョコレート、プリン、場合によっては白玉、赤くて透明で甘酸っぱいソース、パフェを構成する全ては私には敷居が高い。そもそもパフェという言葉の響きがもはや暴力的なまでに甘い。パ行というかわいくて頭の悪そうな音列の中でも、あ段というこれまた口を大きく開けた間抜けで優しく人の良さそうな段に属す「ぱ」という最強かわいい音をはじめに持ってくるこのインパクト。声に出して是非発声してみて欲しいのですが、「ぱ」と口に出した瞬間なんだか自分がとてつもなくバカになったかのような、「ぱ」の口のままもうこれ以上どこにもいけなくなるような、そんな心もとない気持ちになりませんか。あのー、あれですよね、パペットの口を大きく開いた瞬間の阿保キュートな感じですよね。阿キュート。パペットも「ぱ」から始まるしね。
とにかく「ぱ」はそういうことです。パフェはここからがすごい。「ぱ」で開きっぱなしになった口を今度は「ふぇ」に持ってくる。「ぱふ」でも「ぱふぁ」でも「ぱふぃ」でも「ぱふぉ」でもなく「ぱふぇ」。わかりますかこの絶妙な抜け感が。抜け感ってなにが抜けるのかわからないけども。ぱふ、じゃ粉っぽいしぱふぁ、ぱふぉ、じゃバカっぽすぎる、PUFFYは去年デビュー二十周年だったみたいですね。とにかくぱふぇ、バカっぽすぎず鋭すぎず、ぱで開ききった口から柔らかく息を吐き出すような、そういう、繊細なかわいさでできた完璧な布陣ですよね。ほんとにね。
とにかく、私は、だからというわけでもないですが、さっきサンマルクのレジで、私の前に並んだ女の子が、トレイの上にわんさかいちごみるくチョコクロとシュガーデニッシュ的な、とにかく甘いパンをたくさん乗せた女の子が、黒くて白くて桃色でふわふわした女の子が、甘ったるい声で「ぷりんちょこぱふぇくださぁい」って言った時、これはほんとに馬鹿にしてるんでもなんでもなくて(馬鹿にはしていないがパフェを頼んだ女の子がその後パフェを食べながらTwitterで他人の悪口を少ない語彙で呟いていればちょっとなんか小気味いいなとは思っている)、やはりやはりパフェを食べるには資格が必要なんだと、私にはその資格が無いんだと、海よりも深く山よりも高く納得したのでありました。
あー、でもパフェ、パフェ食べてみたいな。うん。